クールな西園寺くんと、婚約したら。

「そしたら、お母さんもパートなんかしなくて済むだろうし。俺もこれから高校通わせてもらう身としては……家計のことも気になるし」


拓斗は今、中学三年生。

春から私と同じ南高に進学することが決まったばかりだ。


制服にジャージ、教科書、上履き……。
そりゃもう、入学準備の時点でお金はとんでもなくかかるわけで。


同じく裕福な家庭じゃないことに気付いている拓斗もまた、お父さんやお母さんに申し訳なく思っているのかもしれない。


だけど……。


「私に犠牲になれって言うわけ?」


それと、これは別な気もしなくもない。



確かに、いつかはお父さんとお母さんに楽させてあげたいと思ってるけど、


だからって、西園寺グループの御曹司に嫁ぐ理由にはならない。私が御曹司と結婚したからって、お父さんとお母さんが楽になるわけじゃないし。


そりゃ、良いところに嫁いだら、お父さんとお母さんにとっては嬉しいことなんだろうけど


そこに愛はないわけで。そんな結婚が上手く行くかなんて分からないし。


御曹司に嫁いで出戻りした娘なんて、それこそ世間の笑いものだ。


やっぱり、庶民育ちと御曹司は釣り合わないわよね〜って言う近所のおばちゃん達の声が聞こえてくるような気がする。