「今週末の金曜日空けておけよ?」
内線で呼ばれ部屋に行くと唐突にそう言われた。
すぐにピンとくる。
「えっと……50周年の式典パーティーですか?」
「ああ、秘書も同席するように」
「それってやっぱり……」
「そう、だから行くぞ」
「行くってどちらに?」
「いいからついて来い」
慌てて後につく。
いつも突然過ぎてリズムが狂う。
2つ3つ要求されるのだってザラだし、何ヶ月も前に遡って業績を聞かれたり…
その時まだここで働いてないんですけど?ってな感じで。
向かっているのは地下駐車場。
「え?本当にどちらに?」
訳のわからないまま「乗れ」と車に乗せられる。
行くって社外なの!?
言われるがままついて来てしまったけど……唖然。
セレブ御用達のドレスセレクトショップ……
「俺の隣を歩くからには俺仕様で行くぞ」と勝手に選んでる。
え?え?本当に!?
確かに式典と聞いた時に私もドレスコードしなくちゃいけないんだろうなと覚悟はしたけども。
次から次へと鏡の前でかざされ首をひねる副社長。
何着か決めて試着させられるんだけど全部派手だよ。
私、秘書ですよ!?
目立っちゃダメでしょ。
試着室を出るたびにお互い赤面したりしてなかなか決まらない。
「全部買っちゃうか」と言い出した副社長を止めるべく、最初からちょっと気になっていたドレスワンピースを手に取った。
それは試着した中からではなくて自分自身で選んだもの。