ゆっくりと視線を下ろし、私はさっきよりも素早く目を瞬いた。

元々力の入ったいなかった表情からさらに力が抜けて、ぽかん、と目の前に立つ男を見る。


両ひざに手をついて心配そうな面持ちでこちらを見下ろしている彼は、見るからに着古した緑色のジャージを着ていた。

横に入れられた白の三本のラインは、一部取れかけている。


さらに、ホームレスか?と心配になるほど伸びてぼさぼさになった焦げ茶色の頭に、曇って見えづらそうな瓶底眼鏡。



私は思わず言葉を失っていた。



こんな絵に描いたような冴えない男がこの世に存在するのか。



「ねえ、きみ」



私が呆然としたまま返事をしないでいると、彼は自分のジャージの上着を脱いで、私の膝元にそっとかけた。微かに柔らかな柔軟剤の匂いがする。