一つだけ、恐ろしいことに気が付く。
さっき時計を確認したら十二月だった。
でも私が記憶しているのは七月。
私は海に行くはずだったのに、今はすごく寒い。
なんだろうこれは。
記憶が混乱している。
頭でも打ったんだろうか。
記憶喪失?
とにかく、このノートを見てみるほかはないんだと思った私は、
ノートに目を落とした。
一つ一つ読んでいって、私は目を見張った。
冬なのに、汗がだらりと流れ落ちた。
ナニコレ。
前向性健忘?
それ、何?記憶が一日しか持たない?
ノートには私が病気になったことが綴られていた。
前向性健忘。
事故なんかで受傷した時点以降の記憶が抜け落ちる病気。
つまりは新しいことを記憶できない病気。
私は今の私が記憶している通り、
海に行こうとして事故に遭い、その時に受けた衝撃によって、
この病気を発症してしまったらしい。
それだけでも衝撃的なのに、
お父さんとお母さんまでが事故に遭い、
死んでしまっているという事実まで書かれていた。
私はすぐに理解出来なくて、かぶりを振った。
嘘よ。そんなはずない。
そんなドラマみたいなこと、あり得ない。
でも、確かにおかしい。
いつもならお母さんが私を起こしに来るのに、
今日は来ていないし、
いつも大音量でテレビを見ているお父さんがいるはずなのに、
今日はそのテレビの音さえもしない。
それってつまり、このノートに書かれていることは本当のことって意味で…。


