泣いていることを忘れていた私はようやく涙に気
が付いて、慌てて拭った。
尚央は私の向かい側に座ると、
女性店員さんを呼んで「いつもの」と一言告げた。
常連さんなのか。
この人の「いつもの」ってなんなんだろう。
「あの、尚央さんは」
「尚央でいいよ」
「な、尚央は、いつも何を頼むんですか?」
「敬語も禁止。俺はね、ハニーミルクラテ」
「ハニー、ミルクラテ」
お待たせしましたと、
店員さんが尚央の目の前に飲み物を運んできた。
これがハニーミルクラテ。
やっぱり可愛いグラスに注がれていた。
尚央はそのハニーミルクラテを飲もうと
口元に近付けたけれど、
チラッと私を見て私にそれを差し出した。
「飲んでみる?」
「えっ、あの、えっと」
「大丈夫。口はつけてないから」
「そういう意味じゃなくて」
「何?嫌い?」
ぶんぶんと首を横に振ると、尚央は
私の手にグラスを握らせた。
戸惑って尚央を見ると
尚央はにっこりと笑って私を見た。
私はそのグラスをゆっくりと口元に近付けて、一口飲んだ。
「美味しい」
「だろ?だろ!ここのハニーはすっげぇ美味しいんだ」


