ふっと笑って再び歌い始める尚央の声に耳を傾けた。
とても切ない歌。
切ない歌を、尚央が優しく歌い上げる。
私もこの曲を覚えておこうと思って、
カーナビの画面に表示された曲名を
そっとノートにメモした。
忘れてしまわないように。覚えていられるように。
曲が終わって、次の曲がかかる。
次の曲も恋愛の歌で、
しっとりしたメロディだった。
こういう曲調が好きなのかな。
私もこういうのは嫌いじゃない。
じゃかじゃかしたものより、
落ち着きのある曲の方がしっくりくる。
まあ、少し眠くなるのが難点だけど。
ノートから目を離して、窓の外を見た。
見たこともない景色が広がる。
車は目的地に着くのに四曲分の時間がかかった。
車が停まったのは、見慣れない山の中だった。
車から降りた尚央は助手席側のドアを開けて私を降ろした。
ぴりっとした寒さが私の頬を駆け抜ける。
尚央は車のカギを閉めると、私の手を引いて歩き出した。
「どこに行くの?」
「少し歩くぞ。いいもの見せてやるから」
いいものって何だろう。
こんな山奥に、何があるんだろう。
こういう道を歩き慣れていない私は
少しも経たないうちに足に疲れがやってきた。
でも、尚央が手を引いてくれるから、
不思議と自分の体が軽く感じた。
どんどん登って、暗がりだった山道に
光が差し込んできたと思ったら……。
「着いた」
「わぁ……」


