「おい、何してんだよ」
「わっ!べ、別に何も」
「波留、お前俺に見惚れただろ」
「そ、そんなんじゃ!」
はははっと尚央が笑う。
なんか私、からかわれてる?
これは大人の余裕ってやつかな。
なんだか異常に、自分が子供のように思えてきた。
いや、まだ高校生なんだけど。
「それより波留。施設の門限とかはないよな?」
「えっ?えっと、ないけど……七時に夕ご飯がある」
「なら今から出かけねぇ?」
「えっ?ど、どこに?」
「ちょっとついてこい」
尚央は席を立つと荷物を持って、私を立ち上がらせた。
つられて立ち上がると
尚央は私の分の伝票も持ってレジへと向かう。
おお、このさり気ない気遣い、やっぱり大人だ。
私たちは「ヴァポーレ」を出た。
店内は暖かかったけれど、外に出ると寒い。
急な気温の変化に驚いて身を縮こませると、
尚央は大きく伸びをした。
この人、今は真冬だよ?
半そでなんか着て、寒くないのかな。
見ているこっちが寒くなってくるよ。
「ねぇ、なんで半そで?」
「あっ?ああ、今日は服装ミスった」
春や秋みたいな曖昧な季節なら分かるけど
真冬に服装を間違えるなんてこと、あるのかな。
よっぽど馬鹿って言いたいけど、
一応大学に入ってるんだからそれはないか。
「マフラー、貸してあげようか?」
「いや、いいよ。半そでにマフラーって合わねぇだろ」


