さっきよりも人が減って静かになった頃、カランコロンと音がした。
顔を上げると、男の人が一人で入ってくる。
紺色のジーンズに、冬なのに半そでTシャツを着ている。
その半そでTシャツが、ダサい。
なんとまあ、ダサい。
何かのキャラクターがピースをしているような、
そんな柄のシャツだった。
顔は整っていてイケメンなのに、
顔よりも服に目がいってしまう。
思わず笑ってしまうと、男の人は私を見て驚いた顔をした。
しばらくぽかんとしていて、そして首をぶんぶん振ると、席に着く。
私の席から斜め右隣の席だった。
男の人は手帳を取り出して、
その手帳と私を交互に見つめる。
それからパソコンを取り出して、
しばらくじっと画面を見つめていた。
真剣な顔つきでパソコンの画面を眺める男の人。
私はノートに目をやった。
昨日の日記にも、その前の日記にも、
そのまた前の日記にも登場する「謎の不審者」の存在に気付いた。
もしかしてこの人がそうなの?
昨日の日記にはさらに細かく特徴が書いてあって、頷けた。
ダサTのこの人が例の不審人物だ。間違いない。
大人びた雰囲気だけど若そうに見える、ちょっと大人な高校生。
連続で同じ場所で会うなんて、どんな偶然なの?
もしかしたらこの人はここの常連さんなのかもしれない。
「いつもの」とかっこよく飲み物を注文した高校生は
顔を上げて私を見つめた。
そして、なんと笑いかけてきた。
びくりと肩を震わせる。
何この人。頭おかしいんじゃないの?
そう思うけれど、何故か知らんふり出来なくて、
私は苦笑いを返した。
きっと、顔はひきつっていると思う。
それでも高校生は嬉しそうに顔を綻ばせるとガタっと席を立った。
おお、近くで見ると改めて背が高いと思う。
高校生は私のそばまで来ると、にっと口角を上げた。


