もう一口口をつけた時、
カランコロンと軽快な音を立てて扉が開いた。
何気なく目をやると、
背の高い男の人が一人で入ってきた。
黒のパンツにGジャンを着た男の人はすらっとしていて、
顔は俗にいうイケメンというやつだ。
それなのに、一つだけ残念なのは、
Gジャンの中に来ている服だけが、異常にダサい。
それ、どこに売っていたの?どこで見つけてきたの?てくらいダサい。
後ろか横から見たら完璧な男の人なはずなのに、
正面から見るとそのダサい服が独特のオーラを放って強調されている。
ついついじっと食い入るように見つめてしまった。
(やばい……)
じっと見ていたからか、男の人も私をチラッと見た。
慌てて視線を逸らして俯きながら髪の毛をいじる。
さっきの店員さんの声が「いらっしゃいませー」と奥から響いた。
そのすぐ後で、「一人で」という低い声が聞こえた。
「いつものですね?」
店員さんが軽快な口調で聞いた。
「いつもの」ってことはいつも来ている常連さんなのかな?
椅子に腰かける音が聞こえたので、
私は顔を上げて男の人を見た。
そしてびっくりする。
なんと、男の人がこっちを見ている。
男の人は入り口から近い席に座って、
私の方に向く形で座っている。
私たちは数席を隔てて向かい合っていた。
ぱっと視線を逸らす。
そして恐る恐る視線を元に戻す。
まだ、見ている。もう一度逸らす。また男の人を見る。
それでも男の人は私を見ていた。
驚いたような顔をして、目をぱちくりさせている。
持っていたリュックサックを漁って
手帳のようなものを取り出した。
それを見て、もう一度私を見る。
次に彼はノートパソコンを取り出した。
そのリュックの中にそんなものが入っていたのかと驚く。
彼はパソコンに目を通してしばらくそうしていた。
なにこの人。おかしな人。
そう思いながら私はショコラミントに口をつけた。
しばらく何気ない感じを装って観察していると、
男の人はようやく顔を上げて、なんと私に笑いかけた。
何何何。その笑顔はなんなんだ。
手まで振ってる……。これは私も返すべき?
いや、でも知らない人だ。最早不審者だ。
不審者には隙を見せるべからず。ここは退散しよう。


