え‥‥‥

わたしが望月さんのこと好きなのバレていたの?

胸が震えた。心臓が抉られている気がした。

「そ、その、」
「森戸くんに渡してたね、チョコ。去年は俺にくれたのに‥‥」

哀しそうな望月さんに違和感を覚える。
嫉妬‥してるみたい。今更好きともいえないのに、なんなんだろう。
好きな人がいるくせにどうして‥そんなことをわたしにいうんだろう‥。

ヤバイ、泣きそう。

泣きそうなわたしの涙を止めるのは、未だに鳴り止まない森戸からの着信バイブ音。
いい加減、鳴り止んでくれてもいいのにと思うけど、唯一冷静を保てる音だから鳴り止まないでほしい、とも思う。

「わ、わたしは‥」

好きだと言っちゃいけない。
わたしは営業部のアシスタントとして、数名いるうちで一番望月さんに信頼されているという自信がある。
思い過ごしかもしれないけれど‥
大事な資料はわたしに任せてくれた。
急ぎの資料だってわたしに任せてくれた。
一番わたしに仕事を振ってきてくれた。

わたしが一番仕事面では彼に信頼されている‥‥そう思って、それを誇りに今日までやってきた。

望月さんを好きなわたしの気持ちを活かせるのは仕事だと‥その面で彼を支えようと頑張ってきた。

今わたしが気持ちを伝えてしまったら‥

「森戸とは、ただの同期です。わたしが買ってたチョコを強請ってきてしつこくて‥あげました」

わたしたちの関係はダメになる。
ビジネスライク。仕事でうまくいくにはそれが大事だと思っていたのに。




ーー言葉は気持ちに素直ーー

「わたしが‥」

もう 言ってしまおう。明日のことなんてわからないよ。
でも好きなんだもん。ここで誤魔化して、わたしが好きなのは森戸だって言って何になるの。
気まずくなっても好きだからいいの、わたしが好きだから‥。泣きたくなるくらい、好きで好きでたまらないから‥。

「わたしが、わたしが好きなのはっ」
「ごめん、ちょっと待って」

伝えてしまおう。
ーーそんなわたしの一大決心を

彼が止めた。


‥‥そんな。告白もしちゃダメだったの。

紗奈‥告白しちゃえばって言ったときわたしはしないよって言ったけど、させてもらえないの間違いだったみたい‥。
仕事で気まずくなりたくないのは、望月さんも一緒ってことか。


これ‥振られるよりもきつい。