2月12日。わたしはついに手に入れた。一粒1500円する高級チョコを。わなわなと手が震える。自分で買ったくせに。
デパートに行ったら買わずにはいられなかった。自分へのご褒美なんて銘打ったのはいいものの、気づけば2粒買っていた。一粒ずつ綺麗に包装されたチョコを会社の自分のデスクに置き、睨めっこ。
‥‥これ、サラッと‥‥渡しちゃえばいいんじゃない??包装といて何個も入ってるうちの一つですよ、くらいに渡しちゃえばいいんじゃない?
好きな人がいると知ってしまったからには、今年がラストチョコ。渡すことに意味があるか、と言われれば微妙だけど渡したい。やっぱり好きだから。絶対にこれで諦めるし。
絶対‥というのは、やめておく。諦める努力するし。
「お、うまそーなもん持ってるな。一個くれよ」
そんな言葉と同時に後ろから伸びてきた手に、ギョッとした。
「や、やめてー!これは、これは!アンタのじゃないから!!」
勢いよく振り向き、手を掴んだ。
「いつもお菓子くれるくせにケチ」
「いつもお菓子あげてるんだから、ケチじゃないっ」
一粒1500円の高級チョコを、チロルチョコ感覚で一個くれと言い放ってきたのはわたしと望月さんと同じ営業部で働く、同期の森戸。
いつも何かとお菓子を強請るため、内心自分で買えばいいのにと思いつつ、引き出しにストックしている自分用のチョコやクッキーなどを差し出す。たまに大きな見返りがあるから、という理由は彼自身も知らないだろうけど‥‥。
「てか、アンタのじゃないって何?好きなやつでもいんの?」
「森戸に言う必要はナイ!」
「はぁ?同期だろ?あ‥‥バレンタイン、」
「何も言わないでっ!!ていうかこんな綺麗に包装されてるものを、よくもらおうとできるよねっ」
ここは会社、望月さんは同じ部署。もちろんわたしと森戸の会話なんて微塵も気にしていないだろうけど、もし!もし仮にこの会話が耳に入って、このチョコが特別なものだと知られてしまったら‥‥渡せなくなってしまう。
もうチョコを渡すのは最後にするから、受け取るだけ受け取ってほしい。特別な気持ちはこもっていないように見せるから。好きな人からのチョコじゃなくて申し訳ないけど。チロルチョコくらいの値段だと思わせつつわたしの気持ちだけ込めたいから‥‥。
変なやつ、と森戸が呟いたけどどうでもよかった。彼を諦めること、すなわちわたしの5年間の想いに終止符を打つこと。
よく考えたら5年も好きでいれたことを誇りに思う。彼の浮いた話がなかったから‥‥。諦める必要も感じなかったのか。
デパートに行ったら買わずにはいられなかった。自分へのご褒美なんて銘打ったのはいいものの、気づけば2粒買っていた。一粒ずつ綺麗に包装されたチョコを会社の自分のデスクに置き、睨めっこ。
‥‥これ、サラッと‥‥渡しちゃえばいいんじゃない??包装といて何個も入ってるうちの一つですよ、くらいに渡しちゃえばいいんじゃない?
好きな人がいると知ってしまったからには、今年がラストチョコ。渡すことに意味があるか、と言われれば微妙だけど渡したい。やっぱり好きだから。絶対にこれで諦めるし。
絶対‥というのは、やめておく。諦める努力するし。
「お、うまそーなもん持ってるな。一個くれよ」
そんな言葉と同時に後ろから伸びてきた手に、ギョッとした。
「や、やめてー!これは、これは!アンタのじゃないから!!」
勢いよく振り向き、手を掴んだ。
「いつもお菓子くれるくせにケチ」
「いつもお菓子あげてるんだから、ケチじゃないっ」
一粒1500円の高級チョコを、チロルチョコ感覚で一個くれと言い放ってきたのはわたしと望月さんと同じ営業部で働く、同期の森戸。
いつも何かとお菓子を強請るため、内心自分で買えばいいのにと思いつつ、引き出しにストックしている自分用のチョコやクッキーなどを差し出す。たまに大きな見返りがあるから、という理由は彼自身も知らないだろうけど‥‥。
「てか、アンタのじゃないって何?好きなやつでもいんの?」
「森戸に言う必要はナイ!」
「はぁ?同期だろ?あ‥‥バレンタイン、」
「何も言わないでっ!!ていうかこんな綺麗に包装されてるものを、よくもらおうとできるよねっ」
ここは会社、望月さんは同じ部署。もちろんわたしと森戸の会話なんて微塵も気にしていないだろうけど、もし!もし仮にこの会話が耳に入って、このチョコが特別なものだと知られてしまったら‥‥渡せなくなってしまう。
もうチョコを渡すのは最後にするから、受け取るだけ受け取ってほしい。特別な気持ちはこもっていないように見せるから。好きな人からのチョコじゃなくて申し訳ないけど。チロルチョコくらいの値段だと思わせつつわたしの気持ちだけ込めたいから‥‥。
変なやつ、と森戸が呟いたけどどうでもよかった。彼を諦めること、すなわちわたしの5年間の想いに終止符を打つこと。
よく考えたら5年も好きでいれたことを誇りに思う。彼の浮いた話がなかったから‥‥。諦める必要も感じなかったのか。

