喋りすぎてしまっただろうか。
個人的な感傷をつらつら聞かされて、七村圭介に呆れられたかもしれない。

「なるほど」と彼は短くつぶやいた。表情と口調からはなにも読みとれない。
ひと息おいて、「非常に参考になった。聞かせてくれてありがとう」と続ける。

「いぇ・・・」参考になったならいいのだけど。こんなただの思い出話が。

「もう一つ、参考までに聞かせて欲しいんだけど」

なんだろう。

「まだお互いのことをあまり知らない相手と食事に行くなら、奥谷さんはどんなお店に行きたい?」

店舗デザインのモニタリングだろうか。

「そう、ですね・・・」首をかしげる。
「相手の方が贔屓にしているお店とか、いいですね。どんな食べ物が好きなのか、どんなお店を行きつけにしてるのかって、その方の人となりが出ると思うから。
できればあまりテーブルマナーとかに厳しくないようなお店で。アットホームな雰囲気で、料理が美味しくて・・・って欲張りすぎですね」

なぜだか彼の前だと喋りすぎてしまう。