私は、汐里の視線が向く方を確かめた。

そして、確かに私にもその汐里曰く「イケメン」の人物が見えた。

思わず、肩が跳ねたのは、おそらく私だけだと思う。

その中心に見えたのは、私の見間違いでなければ、あの人だった。

驚いて少しの間、私は固まってしまった。



「吾妻さ──」



驚きが声になってしまったとき、不意にあの人がこちらを向いた。

明らかに、目が合う。

ああ、馬鹿。

さっさと前を向いて、湯気の立つ素敵なおろしハンバーグ定食を受け取ってしまえば良かったのに。

慌てて、体ごと顔を逸らしても、後の祭。

出来れば、気付かれたくなかった。

だって、社内の人には、この関係をあまり知られなくない。



「見えた? ね、かなりイケメンじゃない?!」