「宣戦布告、されたんでしょ」

「あ、まぁ……でも、そんなに気にすること──」

「女性はこういうことには、特に敏感で陰湿なところがあるから。本当に気をつけてよ」



思わず、何も言えなくなった。

それはきっと、吾妻さんが少し強めに訴えてきたからだ。

その数秒後に、ようやく恐怖心が芽生えた。

吾妻さんのせいではなく、あの日の、あの女の子の眼光をまた思い出したから。



「わ、わかり……ました」



吾妻さんは私の返事を聞くと、一度頷いた。



「本当に……心配してんだからね」

「……あ、ありがとうございます」

「よし! じゃあ、今日はここまで。また次回ね」



私は、お辞儀をして部屋を出た。

仕事が終わり、人が減った、やや静かな会社の廊下は、少し寂しかった。

あれだけ、吾妻さんと賑やかにいろんなことを話したからかもしれない。

何故だか、浮かれていた。

興奮により、顔が火照ったままだ。

駐車場に向かう間も、ずっと熱は冷めそうになかった。