そういって、吾妻さんが先に入り、扉を押さえてくれる。



「失礼します……」

「みさおさん」

「はいっ」



不意に名前を呼ばれ、肩が跳ねた。

そんな私を見て、吾妻さんが何故かしら笑う。



「そんなに緊張しなくていいよ。何も取って食うような真似はしないから」



思わず、目を見開く。

正解、まさに私は今、かなり緊張している。

吾妻さん相手に何を、と我ながら思うけれど。

確かに私の表情、態度や話し方、何もかもが分かりやすかったかもしれない。

そんな私の心を汲み取ってくれた。

そう思うと、だんだん照れ臭くなってくる。



「で、でも、以前、吾妻さんに家まで送っていただいたときには、微妙なことを言われました」

「実際、何も無かったでしょ! 相変わらず、信用無いなぁ」

「……前よりは信用するように、努力してますよ」

「え」

「じゃなきゃ、こんな風に連絡しようなんて、思う訳ないじゃないですか」



私がそう言えば、吾妻さんは少し目を見開いて、赤くなった。