羊かぶり☆ベイベー


お酒の味に満足して、ここへ来た本来の目的など、考えたところで、どう仕様も無い。

無かったことにしてしまおうと考え始めた。

そのとき、隣から吹き出し、笑う声が聞こえてきた。

隣を見れば、青年が口を片手で押さえて、笑っている。



「……何ですか」

「いや、お姉さんさ。面白いなぁ、と思って」

「失礼じゃないですか?初対面の人に向かって……」



私はしかめっ面をしているつもりなのだが、青年は如何にも愉快そうにしていた。

かと思えば、こちらを少し見たあと、表情をコロッと変え、私との距離を縮める。

あまりに突然のことに私は驚き、少し仰け反った。



「お姉さん…もしかして、泣いてる?」



まるで学生時代にする、自由研究の対象を見る様に、青年はじっとりと私の顔面を見る。

私は彼に、軽く嫌悪感を覚えていた。



「だったら、何ですか」

「辛いことでもあった?」

「あなたみたいな人には、教えません」

「辛いんでしょ?」

「ちょっと…あなた、図々しいですよ。というより、軽い」

「図々しさは、職業柄仕方ないの」

「な、何それ。どんなお仕事されてるんですか。怪しい……」



私は、怪訝な顔で青年を見る。

すると、彼はニタリと少し嫌みに笑み、こう言った。



「人のせっかくの厚意を疑って、無下にする、お姉さんみたいな人には、教えません」