お酒の味に満足して、ここへ来た本来の目的など、考えたところで、どう仕様も無い。
無かったことにしてしまおうと考え始めた。
そのとき、隣から吹き出し、笑う声が聞こえてきた。
隣を見れば、青年が口を片手で押さえて、笑っている。
「……何ですか」
「いや、お姉さんさ。面白いなぁ、と思って」
「失礼じゃないですか?初対面の人に向かって……」
私はしかめっ面をしているつもりなのだが、青年は如何にも愉快そうにしていた。
かと思えば、こちらを少し見たあと、表情をコロッと変え、私との距離を縮める。
あまりに突然のことに私は驚き、少し仰け反った。
「お姉さん…もしかして、泣いてる?」
まるで学生時代にする、自由研究の対象を見る様に、青年はじっとりと私の顔面を見る。
私は彼に、軽く嫌悪感を覚えていた。
「だったら、何ですか」
「辛いことでもあった?」
「あなたみたいな人には、教えません」
「辛いんでしょ?」
「ちょっと…あなた、図々しいですよ。というより、軽い」
「図々しさは、職業柄仕方ないの」
「な、何それ。どんなお仕事されてるんですか。怪しい……」
私は、怪訝な顔で青年を見る。
すると、彼はニタリと少し嫌みに笑み、こう言った。
「人のせっかくの厚意を疑って、無下にする、お姉さんみたいな人には、教えません」



