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吾妻さんに言われた通りの時刻に、2階の一番奥の部屋までやって来た。
扉を見ると、そこには「カウンセリングルーム」と確かにプレートが掛けられている。
本当に、ここに吾妻さんが居るのかと思うと、不思議な感じがする。
ノックをしようかしまいか、ソワソワしていたところに、背後から足音が聞こえてきた。
革靴の高い音。
足音の方を振り返ると、見慣れた吾妻さんが立っていた。
居酒屋のリラックスした空間の中に居る姿しか知らない人が、何故か、本当に私の会社に居る。
違和感しかなかった。
吾妻さんは、ハンカチで手を拭いている。
休憩から戻ってきたのだろう。
「おっ、みさおさん。こんにちは」
「こんにちは……」
「カウンセリングまで、まだ時間もあるし、どうぞ中に入って寛いでてください」



