吾妻さんが再び話し出してくれるのを待つ、この時間が異様に長く感じてならない。
「あ、あの。もしもし……?」
『みさおさん……?』
「あ、はい」
『あー……みさおさんだったのかぁ』
「すみません。黙っていて」
『別に良いんだけど、何で俺がこういうことしてるって知ってるの?』
いくら能天気に見える吾妻さんでも、今回ばかりは怒っているのかもしれない。
私が店長から名刺を受け取って、勝手に電話してしまったのだから。
事実とは違ったとしても、吾妻さんからしてみれば、探りを入れられたと思われても、言い訳が出来ない。
素直に伝えるしかない。
「店長が吾妻さんの名刺を、見せてくださって」
『……壮が?』
「はい」
吾妻さんの声が驚いている。
そして、聞こえるか聞こえないかというくらいの声で、ぽつりと呟いた。
『珍しいことも……あるもんだな……』
「え?」



