羊かぶり☆ベイベー




「勝手にどうぞ」



私が呆れて返事をしても、吾妻さんが動く気配がない。



「どうしたんですか?行くなら、早く行ってください」

「……そういえば、今日は送っていかなくて大丈夫?」

「大丈夫です。今日は最初から、代行を頼むつもりだったので」

「あ、そう。それなら、いいけど」

「明日、早いんですよね」

「はいはい、行きますよ」



今度こそ帰ると思ったのに、少し行った先で吾妻さんは振り返る。



「吾妻さん。そろそろ、しつこい──」

「みさおさん。言っておきたいことが、あるんだけど」



呼ばれた声、振り向いた表情があまりにも大真面目で、思わず目が離せなくなった。

先程までの、おふざけなんて無かったかのように、そこに居るのは、まるで別人のように思えた。

本来なら、それほどのことでもないはずが、不思議と次の動作が思い浮かばない。

ただ吾妻さんの表情から、目線が外せないで居る。

そんな私をどう思ったのか、吾妻さんは笑うでもなく、眉尻を下げる。



「問題は早いうちに何とかしないと、手遅れになるよ」

「はい?」