必ずここに居るという確信は無かったけれど、本当に居た。
「吾妻さん、今日も来ていたんですね」
「こいつ、ほぼ毎日来てますよ」
「毎日は来てねぇし」
店長には珍しい苦笑いが見られて、少し嬉しくなり私からも笑い返した。
促された席まで辿り着き、座ろうとした。
「隣、来ていいよ」
「いいえ。ここで結構です」
私の可もなく不可もない何とも言えない感情が、おそらく表情に出てしまっていることだろう。
そのまま、腰を下ろす。
少し拗ねる吾妻さんなど気にする様子も無く、店長は淡々と私に尋ねる。
「ご注文は?」
「今日もおまかせで」
「はい、かしこまりました」
今日のお酒は何だろう。
胸を躍らせていると、視線を感じた。
視線の方へ目をやると、吾妻さんと目が合う。
「何ですか?」
私が言うと、吾妻さんは口角を上げた。
「そういえば、午前中はありがとうね」
「午前中?」
言おうとしていることは、分かっているけど、敢えてとぼけたフリをする。



