そうして、昨日の今日で私はまた一人で、ここへやって来てしまった。

小ぢんまりした建物の、扉の前に立つ。

例の飲み屋だ。

今回の目的は、決して自棄酒でもなければ、慰めてほしくてやって来たわけでもない。

何となく、あの人に会いたくなってしまったからだ。

初対面でもスラスラ話せてしまった、あの人。

彼氏がいるのに、こんなことはいけない。

分かっているのに。

ここに来れば、あの人と再び、いや、三度(みたび)会えるかもしれない。

ユウくんのお誘いを断ってまで、そう思ってしまった。

扉の前に来てまで、まだ悶々と悩む。



「私、本当にいけないこと考えてる……」



お店の壁に寄りかかり、顔を覆って、悩む。

中には入らず、このまま引き返そうとも思った。

そう思ったのだが、ふと以前に口にした店長が作ってくれた、お酒の味を思い出す。



「ちょっと……ちょっとだけなら、別にいいよね」



一人言を呟きながら、店の中に入ることを決心する。

目的は、美味しいお酒を飲むことに、私の中で変更された。