思わず、痛い程に突き刺さる視線の先へ、愛想笑いを向ける。

相手の顔を見た、その瞬間、あまりの驚きに、上手く声が出なかった。



「え……あ……あああ、吾妻さん?」

「どうも。やっぱり、みさおさんですよね」

「二人とも、顔見知りか何か?」



吾妻さんの正面に座る、うちの部長が割って間に入る。

一夜限りの関係で、終わるはずだった人。

…………いやいや、この言い方では、誤解を招いてしまう。



「あ、えっと…………行きつけのお店でつい最近、知り合った呑み仲間です。あはは……」



何とも言い難い関係を、笑って誤魔化した。

そうすれば、部長も大して重要な話題ではないために、軽く相槌を打っている。

私は苦し紛れにでも、話題を流せたことにホッとする。

すると吾妻さんは、そんな私を横目で見ながら、不服そうに、呟くように言う。



「バカ正直。微妙な嘘付くね。あんなに俺のこと、警戒してたくせに──

「黙ってください」



吾妻さんの余計な口を、私は塞いだ。