お盆に並んだ2つの湯飲みに向かい、何故かしら再び溜め息が漏れる。

あの出来事は、これ程までに何故、私を憂鬱にさせているのだろう。

得体もしれない、訳もわからない胸のつっかえを気にしていたって、仕様がない。

溜め息に似た深呼吸を繰り返して、応接室へと辿り着いた。

ノック3回で、中へ入る。



「失礼致します」



部長とお客人の前へお茶を置いていくと、私の頬の辺りに何かが突き刺さっている、ような気がする。

これは……おそらく視線。

視線の方向からは、部長ではなく、お客人の方から。

え、何か?作法がなってない?

それとも、何?

向こうの恋が始まっちゃってる?

って、それだけは無いか。

私にそんな魅力は無いのだから。

このまま知らぬフリをして、この部屋を立ち去ってしまっても、何ら問題は無いのだろうけれど。