アスファルトに白線が引かれた、至って普通の駐車スペースに到着する。

これからしようと考えていることに、怖じ気付いているからか、いつもよりも私の気持ちが不安定になっているようだ。

白線、真っ直ぐに上手く駐車することが出来ない。

今夜はここに、車は置いていくつもりだから、しっかり真っ直ぐに停めないと。

私の可笑しな色をした愛車が、他の車に当てられでもしたら、大変だから。

何度か切り返して、ようやく納得した私は車から降りる。

そして、駐車場から10分程の道を歩いた。

何てことはない、舗装された道路をどんどん行く。

目的の場所まで来たら、小ぢんまりとした建物の入口の扉を開いた。



「いらっしゃいませ。こんばんは。カウンター席へどうぞ」



いまいち、やる気の無さげな男性が席へ通してくれる。

彼が、この小さな飲み屋さんで働く、たった一人の店長だ。

やはり今日もお客さんは、誰も居ない。

この緩く、着飾らない雰囲気が気に入っている。

無論、私の行き付けだ。

でも、一人で来たことは、今までに一度もない。

今の私の姿を他に晒すくらいなら、こんな夜は、いっそのこと自棄になって、一人酒してしまった方がいい。

これを、一度はしてみたかった。

「自棄」は余計だけど、一人で思い切り呑んでみたかった。

ゆっくりと椅子に腰をかける。