私は会社に向かおうと、車に乗り込んだ。

ふと、目がいったのは、隣の駐車スペース。

昨日は確かに、ここに吾妻さんの車があった。

何故か、既に無いものに、名残惜しさを感じている。

吾妻さんが、どこで何をしている人なのか、私は知らない。

正確には、教えてくれなかった。

何もない隣のスペースを見つめては、何とも言い難い感情が込み上げてくる。

何だろう?寂しい?違う。

何かの歌の歌詞ではないけれど、この気持ちは何だろう。

しばらくそこを見つめたまま、静止していた。



「何、考えてんだろう……」



もうここには居ない人のことを考えたって、仕様のないこと。