父親が「男のつくれ」なんて言うのは、彼氏ができたということを私が伝えていないためだ。

だって、まだ数ヶ月しか付き合っていない。

伝える段階でもないと、思っているから言い出せない。

その上、浮気されたばかりだし。

まだしばらくは黙って居よう。

そうこう考えている間にも、あのお店から少し離れた駐車場に到着していた。



「ありがとう」

「気をつけてな」



一言だけを無愛想に言い放ち、父親は行ってしまった。

私の父親は無愛想だが、どこか威厳がある。

母親も、よくあんな男の人と一緒になったものだ。

過去に母とそんな話になったとき、母は「あの人が私を選んでくれるなんて思わなかった」「泣くほど嬉しかった」と言った。

娘は父親に似た人を好きになるとは言うが、私は多分違うと思っていた。

だけど、歳も感覚も少しだけ大人になってから、考え直したことがある。

まさに、今も。

ついさっき父親が言った「護衛でもしてくれる男」は、私としては、父親の面影が重なる。

そういうことだ。

私が好きになるのは、きっと、あんな人。