ただの近所の曲がり角を見つめて、少し残念だと感じている私自身に、我ながら驚く。
吾妻さんの第一印象も、最後までの印象も、私にとっては最低だったのに。
はじめこそ罪悪感の塊だったのに、それは徐々に薄まっていき、別れ際には確かにそんなに悪い人でもなさそうだと思えていた。
それどころか、むしろ「この人、気遣いの出来る良い人なんだな」と思えるところまでは来ていた。
だから、吾妻さんとの突然の「はじめまして」と、あまりにも呆気ない「さようなら」に気持ちが追い付いていない。
まあ、そんなことも、こうして送られて別れてしまった今では、もう関係のない相手だ。
もう二度と、会うこともないんだろうし。
そして、明日から、同じ職場の浮気をしていた私の彼氏と、顔を会わせる毎日が始まるんだろう。
溜め息を一つ吐き、家までの道を歩いた。



