「みさおさん……何のつもりですか?」
「わっ、私の精一杯の防御……です」
僭越ながら、迫りくる吾妻さんの両頬を、私の両手の平で挟み込ませていただいた。
吾妻さんが分かりやすく、むくれる。
そんな顔されたって、まだ、照れてしまって、自分がどんな風になるか想像出来ないから、こわい。
吾妻さんを止めたは良いものの、ここから身動きが取れない。
手を離したら、何が起こるかなんて、分からないから。
困っていると、吾妻さんの手が私の手を、そっと剥がす。
そして、手のひらに優しいキスをした。
「……っ」
私が声にならない声を出すと、ニヤリと笑う。
「みさおさんは、羊さんだもんね。慣れてもらえるように、頑張らせてもらいます」
「なっ……」
「怖がらせないように、優しく、たくさん甘やかして──」
「ちょ、ちょっと静かにしてもらえますか……!」
堪らず、窓の方を向いて、顔を隠す。
隣でクスクス笑っているのが、聞こえる。
吾妻さんには、敵わないのは分かっていた。
だけど、ここまでとは。
私の心臓が、バクバク言っている。
──私、もたないかも……。
顔を背けたまま、胸の高鳴りを落ち着かせようと努めるが、収まりそうもない。
人が必死なのにも関わらず、耳に触れられる。
「みさおさん程、素直な人、居ないよ。……本当に、可愛い人」
愛おしそうに囁く声に、胸が甘く疼いて反応している。
嬉しい。
だけど、言ってあげない。
言えない。
声に、ならないから。
表側の羊の私は、警戒して慣れない風にしているけど。
本当の私は、彼に夢中なだけの羊。
本当の私を見つけ出してくれたのは、貴方でした──。
羊かぶり☆ベイベー
(本当は、大好きなの)
おわり。



