羊かぶり☆ベイベー




「あ、あれは……」

「また、忘れちゃった?」

「覚えてますよ! カミカゼです。カクテル言葉は…………」

「みさおさん?」



忘れた訳じゃない。

言いにくい訳でもない。

少し照れているだけだ。

2人で居るとき、普段はしない筈の緊張のせいで。

深呼吸で気持ちを落ち着かせてから、ゆっくり言葉を発する。



「『覚悟』そして『あなたを救う』なんですって……」

「……そうなんだ」

「『あなたを救う』って、まさに私にとって吾妻さんのことだ、って思いました。あのカクテル、ずっと吾妻さんだと思って、飲んでて」



自分で言っていて、小恥ずかしくなってくる。

顔が熱い。

照れ隠しで笑い掛けてみたが、思いの外、真剣な表情の吾妻さんが視界に映る。



「ちょっと、吾妻さん? 本当になんか変ですよ」

「みさおさん。今度こそ、俺、伝えたいことがあるんだけどさ」

「は、はい」

「俺、みさおさんのこと──」



私がじっと見つめていると、吾妻さんが言い淀む。



「そんなに、見ないで。照れるから……」



はにかむ吾妻さんが、可愛らしく思える。

そんなことを口に出すと、きっと、また大切な話が進まなくなってしまうと思い、ぐっと私の中だけで収めた。



「ごめんなさい」

「別に、良いよ」

「それで、伝えたいことって……」

「うん。みさおさん、気付いてたかどうか、分からないけど、俺、初めて会ったときから、みさおさんのこと、好きだった」

「なっ……。嘘……初めて会ったとき……?」



予想外のことに、茶化すことも、弄ることも出来ない。

ただ、見つめることしか出来ない。

また照れながら、止めろ、と言われたって、今はそれ以外することが出来ない。