少し離れた駐車場までの道のりを、2人して無言で歩く。
あの楽しい空間から出てきて、吾妻さんが無口なのは、とても珍しいことだと思う。
──何だか、吾妻さんが変だ。
本当は私を送るのが、億劫だったのではないか、と心配になり、彼を見上げた。
吾妻さんは真っ直ぐは見ておらず、少し斜め上に視線をやっていた。
「……吾妻さん?」
呼び掛けに、吾妻さんは少し体を揺らし、驚いている様子だった。
そして、その後すぐに、私を見る。
「ん?」
「良かったですか? 半ば強引に、お願いしちゃいましたけど」
「なんで? 言ったのは、みさおさんじゃないじゃん。壮だよ」
「だから、申し訳なくて。私なら、大丈夫ですから。今からでも、タクシー呼びます」
話している間にも、足は駐車場に辿り着いていた。
目の前には、他に車は無く、私達の愛車だけが並んでいる。
「相変わらず、気にしいだなぁ。みさおさんは」
溜め息混じりに言う、吾妻さんの顔は笑っている。
薄暗くても、ちゃんと分かる。
そのまま、車のキーを開けて、まるで執事の様にドアを開いた。
「みさおさんさえ、嫌じゃなければ、俺に送らせてください」
そんな状態で待たれてしまっては、断ることは出来ない。
それに、別に嫌な訳じゃない。
おずおずと進み、素直に乗せてもらうことにする。
「お願いします」
「どうぞ。閉めるよ」
吾妻さんが、静かにドアを閉める。
運転席に乗り込むと、距離が突然、近くなった気がした。
物理的に近いのは、もちろんなのだが、さっきまで1つ席を空けて座って居たからか、尚更、感覚的にそう思えた。
今更のことながら、妙に緊張する。
今、一緒に居るのは吾妻さんな筈なのに、身体が強張っている自分が、不思議で堪らなかった。
その理由は、お店を出てから、吾妻さんもまた様子がおかしくなったからだ。
今でさえも、彼の様子がおかしい。
エンジンをかけたのに、なかなか発進しようとしない。



