羊かぶり☆ベイベー

私は我が儘だ。

そう思い、彼の声を遮る。



『大丈夫』

『え?』



あまりにも間抜けな声が聞こえてきたから、私もその場ゆっくりと振り返り、彼を見上げた。

その時の彼の顔といったら。



『え、大丈夫って……それって、怒ってないの?』



何故かしら、安堵を浮かべている。

私はと言えば、少しずつ心が曇り始める。

複雑な想いの理由が「先程まで浮気していた彼が、後を追いかけてきてくれて嬉しい」だなんて、そんなことは当然ない。

こういった状況に陥ってまでも、彼の行為に対して、何とも思えない情けない自分自身に、複雑な想いを抱いている。

私が外見だけでも、冷静に振る舞えるのは、自身が一番よくわかっていたからかもしれない。

彼と私では、あまりにも填まらないということくらい。

20代で恋愛経験ゼロだからといって、焦りすぎた。

これ程、はじけた容姿の彼と、そんな彼に合わせようともしない内外共に普通な私だ。

そりゃ、釣り合いがとれるわけがないのだから。

それなのに、一瞬でも喜んで付き合おうと思った自分が、非常に恥ずかしくて、情けなく感じた。