「ごめんなさい……迷惑、かけて」
「謝らないで」
「……でも、巻き込んでしまったから」
「別に巻き込まれたとも、迷惑だとも思ってないよ、俺」
安心できる、優しい声色。
また気を遣ってくれている。
しかし、今はいつもの申し訳なさよりも、嬉しさが勝っている。
「吾妻さん」
「お次は、何ですか」
頬杖をついて、楽しそうに笑ってくれるから、胸がきゅっとなる。
「ありがとう……」
「え」
「本当にありがとう、ございます」
「いや、だから、俺は」
「もう……またそうやって、謙遜して。素直に、受け取ってほしいんです。私の気持ちを」
私が言うと、吾妻さんは動きを止め、瞼を閉じた。
何故かしら、顔に力を入れているらしく、顔がしわくちゃだ。
「あ、あの、吾妻さん……」
「んん……俺にはみさおさんが、何でそんなに自分のことで悩んでるのかが、分からない」
「え」
「え?」
「そんな、散々、相談にのってくれた後で、酷い」
「や! 違う! そうじゃなくて。もっと自信持ったら、良いのにと思って」
自分に自信を持てたなら、どんなに違う人生の歩み方になっていたことか。
つい、心の中で皮肉を唱えてしまうけど。
でも、お世辞だとしても、そんなことを彼の口から聞けたら嬉しいに決まっている。
「そう思ってくれるのは、きっと、吾妻さんくらいです」



