本当に、十分過ぎる程に。
こんなにも人に強く、自分から主張をしてしまった。
誰にも私の恩人を、否定してほしくなかったのもある。
そして、その恩人には、今度こそ謙遜なんてせずに、この気持ちを受け止めてしてもらいたかった。
どうしても。
これは、まるで叶わない「恋」の様で。
何度、言ったって、じれったくて敵わないけど。
「もしかして……」
ユウくんは呟くと、吾妻さんを見た。
「みさおちゃんが、あんたに相談してたのって、もしかして俺のことですか?」
吾妻さんは一呼吸置いて、カウンセリングの時のように、平坦な口調で答える。
「どうして、そう思われたんですか?」
「どうしてって。会社を出る前、俺の話をよく聞いてるって、言われたのを思い出したからです」
「……申し訳ありません。その質問については『カウンセラーの決まり』で教えることが出来ないんです」
「は?」
「カウンセリングの内容については、ご本人の気持ちを一番に尊重する為、例え、ご家族の方ですら、お教えすることは出来ない決まりです」
「なんだそれ」
「申し訳ありません」
納得いかず、更に機嫌を悪くしたユウくんと、あくまで冷静な吾妻さん。
敬語で、かしこまった吾妻さんは、やっぱり慣れない。
すると、吾妻さんが私を一瞥すると、視線をユウくんへ戻す。
「ただ、彼女ご本人が話しても良いと言われる場合には、その気持ちも、また尊重したいと思います。どこまでなら話しても良い、それが分かるのは、ご本人だけですので」
そう言われ、ユウくんがこちらに向き直る。
大丈夫、覚悟は出来ている。
テーブルの下に隠してあった、震える拳を握った。
「ねぇ、俺のこと?」
「……ううん」
「嘘、吐かないでよ」
嘘を疑うなんて、真相を隠したままの人に言われる筋合いは無い。



