羊かぶり☆ベイベー




本当に、十分過ぎる程に。

こんなにも人に強く、自分から主張をしてしまった。

誰にも私の恩人を、否定してほしくなかったのもある。

そして、その恩人には、今度こそ謙遜なんてせずに、この気持ちを受け止めてしてもらいたかった。

どうしても。

これは、まるで叶わない「恋」の様で。

何度、言ったって、じれったくて敵わないけど。



「もしかして……」



ユウくんは呟くと、吾妻さんを見た。



「みさおちゃんが、あんたに相談してたのって、もしかして俺のことですか?」



吾妻さんは一呼吸置いて、カウンセリングの時のように、平坦な口調で答える。




「どうして、そう思われたんですか?」

「どうしてって。会社を出る前、俺の話をよく聞いてるって、言われたのを思い出したからです」

「……申し訳ありません。その質問については『カウンセラーの決まり』で教えることが出来ないんです」

「は?」

「カウンセリングの内容については、ご本人の気持ちを一番に尊重する為、例え、ご家族の方ですら、お教えすることは出来ない決まりです」

「なんだそれ」

「申し訳ありません」



納得いかず、更に機嫌を悪くしたユウくんと、あくまで冷静な吾妻さん。

敬語で、かしこまった吾妻さんは、やっぱり慣れない。

すると、吾妻さんが私を一瞥すると、視線をユウくんへ戻す。



「ただ、彼女ご本人が話しても良いと言われる場合には、その気持ちも、また尊重したいと思います。どこまでなら話しても良い、それが分かるのは、ご本人だけですので」



そう言われ、ユウくんがこちらに向き直る。

大丈夫、覚悟は出来ている。

テーブルの下に隠してあった、震える拳を握った。



「ねぇ、俺のこと?」

「……ううん」

「嘘、吐かないでよ」



嘘を疑うなんて、真相を隠したままの人に言われる筋合いは無い。