ようやく、こちらを向いてくれたユウくんは、無表情で頷いた。
そして、直ぐ様、視線だけを吾妻さんへ向ける。
吾妻さんは突然のことに、咄嗟に笑顔を作った。
「何か?」
「俺、よく分かっていないんですが。産業カウンセラーって、主にどんな役割なんですか」
美味しい、楽しいの話を何の躊躇もなく、一変させた。
吾妻さんも、豆鉄砲をくらった鳩の様な顔になる。
気怠そうに尋ねるユウくんは、純粋な質問なのか、そうではないのか、こちら側を惑わせる。
すると、吾妻さんは口角を上げ直し、にこやかに答えた。
「……そうですね。簡単に言えば、その企業に勤める社員さん達のメンタルヘルス、働き方について、その他諸々の悩みをカウンセリングしてサポートをさせて頂いております」
「へぇ。サポートって……何をしてくれるんですか」
「クライアント様のお話を伺って、自力で解決出来るよう、ご本人様の力を信じる、見守ることと言えば良いですかね」
「そんなのって──」
言い掛けて、ユウくんは言葉を止めた。
「何ですか? 思ったことは、遠慮せずに言ってください」
相変わらず、吾妻さんが愛想よく微笑みながら返す。
その態度に、ユウくんが一度静止した。
「そんなのって……意味あるんですか?」
「意味は、各々皆さんに見出だして頂きます」
「結局、突き放してますよね」
──何も知らないくせに。



