羊かぶり☆ベイベー




ようやく、こちらを向いてくれたユウくんは、無表情で頷いた。

そして、直ぐ様、視線だけを吾妻さんへ向ける。

吾妻さんは突然のことに、咄嗟に笑顔を作った。



「何か?」

「俺、よく分かっていないんですが。産業カウンセラーって、主にどんな役割なんですか」



美味しい、楽しいの話を何の躊躇もなく、一変させた。

吾妻さんも、豆鉄砲をくらった鳩の様な顔になる。

気怠そうに尋ねるユウくんは、純粋な質問なのか、そうではないのか、こちら側を惑わせる。

すると、吾妻さんは口角を上げ直し、にこやかに答えた。



「……そうですね。簡単に言えば、その企業に勤める社員さん達のメンタルヘルス、働き方について、その他諸々の悩みをカウンセリングしてサポートをさせて頂いております」

「へぇ。サポートって……何をしてくれるんですか」

「クライアント様のお話を伺って、自力で解決出来るよう、ご本人様の力を信じる、見守ることと言えば良いですかね」

「そんなのって──」



言い掛けて、ユウくんは言葉を止めた。



「何ですか? 思ったことは、遠慮せずに言ってください」



相変わらず、吾妻さんが愛想よく微笑みながら返す。

その態度に、ユウくんが一度静止した。



「そんなのって……意味あるんですか?」

「意味は、各々皆さんに見出だして頂きます」

「結局、突き放してますよね」



──何も知らないくせに。