心は何度も決まっている筈なのに、いつもあと一歩が踏み出せないのは、何故なんだろう。
また今回も私は、なぁなぁにしてしまうのだろうか。
自分の不甲斐なさに嫌と云う程、打ちのめされているくせに。
気張って彼と話していた為か、だんだん疲れてきてしまった。
黒烏龍茶で、一度、渇き切った喉を潤す。
すると、また会話の調子が悪くなったのを見計らってか、丁度良いタイミングで、注文していたサラダが届いた。
「はい、お待たせしました。他のは、もう少し待ってください、って」
持ってきてくれたのは店長ではなく、今度は吾妻さんだった。
吾妻さんが、白い大きめのお皿に盛り付けられたサラダと、2人分の取り分け皿がテーブルに置かれる。
その骨ばった手から、腕を辿って見上げた。
目が合った吾妻さんの表情は、どうした?と問い掛けてくれているようだった。
「あ、ありがとうございます」
頑張って話さないといけないのは、私なのに。
ユウくんとのことに、決着を付けなければならない当事者なら、私なのに。
だけど、本当のところは、助けてほしい。
つい甘えた考えが、頭を過った。
いつも優しくしてくれる、この人を頼ってしまいたくなる。
未だに吾妻さんは、如何にも不思議だと言うように、私を見ている。
優しい、温かい瞳で。
この一瞬ですら、絆されてしまいそう。
しかし、そこをグッと堪えて、目を逸らす。
私の可笑しな様子を窺って、しばらく待ってくれて居た吾妻さんだったが、とうとう戻っていってしまった。
もう私は、どうしたら良いのだろう。
ユウくんに言いたい答なら、とっくに決まっているのに、身動きが取れない。
今、声にしようとすれば、喉が強張って、震える。
前にも同じようなことがあった。
同じことばかり繰り返して、まったく私は何がしたいのだろうか、と自分を責めた。
そして、先程と同じく、ユウくんに一声掛けて、サラダを取り分ける。
よくよく考えれば、こんなことをしなくても、自分が食べる分だけを好きタイミングで取れば良い。
なんて余計なお節介をやいているのだと、今更ながら思う。
愚痴めいた考えを頭の中で、ずっと巡らせていると、手元が誰かの影で暗くなった。



