羊かぶり☆ベイベー




心は何度も決まっている筈なのに、いつもあと一歩が踏み出せないのは、何故なんだろう。

また今回も私は、なぁなぁにしてしまうのだろうか。

自分の不甲斐なさに嫌と云う程、打ちのめされているくせに。

気張って彼と話していた為か、だんだん疲れてきてしまった。

黒烏龍茶で、一度、渇き切った喉を潤す。

すると、また会話の調子が悪くなったのを見計らってか、丁度良いタイミングで、注文していたサラダが届いた。



「はい、お待たせしました。他のは、もう少し待ってください、って」



持ってきてくれたのは店長ではなく、今度は吾妻さんだった。

吾妻さんが、白い大きめのお皿に盛り付けられたサラダと、2人分の取り分け皿がテーブルに置かれる。

その骨ばった手から、腕を辿って見上げた。

目が合った吾妻さんの表情は、どうした?と問い掛けてくれているようだった。



「あ、ありがとうございます」



頑張って話さないといけないのは、私なのに。

ユウくんとのことに、決着を付けなければならない当事者なら、私なのに。

だけど、本当のところは、助けてほしい。

つい甘えた考えが、頭を過った。

いつも優しくしてくれる、この人を頼ってしまいたくなる。

未だに吾妻さんは、如何にも不思議だと言うように、私を見ている。

優しい、温かい瞳で。

この一瞬ですら、絆されてしまいそう。

しかし、そこをグッと堪えて、目を逸らす。

私の可笑しな様子を窺って、しばらく待ってくれて居た吾妻さんだったが、とうとう戻っていってしまった。

もう私は、どうしたら良いのだろう。

ユウくんに言いたい答なら、とっくに決まっているのに、身動きが取れない。

今、声にしようとすれば、喉が強張って、震える。

前にも同じようなことがあった。

同じことばかり繰り返して、まったく私は何がしたいのだろうか、と自分を責めた。

そして、先程と同じく、ユウくんに一声掛けて、サラダを取り分ける。

よくよく考えれば、こんなことをしなくても、自分が食べる分だけを好きタイミングで取れば良い。

なんて余計なお節介をやいているのだと、今更ながら思う。

愚痴めいた考えを頭の中で、ずっと巡らせていると、手元が誰かの影で暗くなった。