何が「そりゃ、そうだ」なのかって?
なぜなら、短期間でも私の彼氏になってくれたのは、私とは真逆の人だったから。
もともと住む世界が、違ったのかもしれない。
彼の容姿は、明るい茶色の髪をしていて、顎には少し髭も生やしている。
あとは、細身で背も高い。
普段はスーツを着てはいるけれど、それでも滲み出ている軽い雰囲気。
外見も中身も真面目な私とでは、そもそもタイプが違い過ぎる。
それなのに、一度は私を選んでくれた。
飲み会のときの彼の告白に対して、はじめは冷やかしだと思っていたのに。
私はそんな彼との始まりを、それをよく覚えている。
あまりの衝撃に、出会った頃の記憶が走馬灯のように、頭の中を巡っていた。
ということは、どのくらいこの現場に留まってしまったのだろう。
『みさおちゃん……?』
案の定、彼に私の存在を気づかれる。
目が合うと、私は駆け足でその場から逃げ出した。



