羊かぶり☆ベイベー




「どんな風に、って……別に……」



彼の表情が、引いている。

多分、私、今、人生で初めて人に向かって、生意気言っている。

今にも、上擦りそうな声で。

でも、知りたい。

彼のことを何も知らないまま、終えるのは嫌だ。

そんな、いつの間にか雲隠れをされて、取り残される様なことは嫌だから。

どんな理由があろうと、何故か私を選んでくれた彼の印象を「嫌な人」それだけで終わらせたくなかった。



「ねぇ」

「ん?」

「ユウくんは、その……」



──さほど、私のこと「好き」じゃないよね。

強いて言えば、気になる、その程度で好意とは全くの別物なのだろうと、もう思わざるを得ない。

しかし、それを今、言い損ねた。

私の中の羊が本日、久方ぶりに登場し、邪魔をしたから。

散々、生意気なことを言っておいて、今更なのに。

相手を傷付けてしまうかも、と思った羊の私が、透かさず邪魔をした。

もっと当たり障りの無い、柔らかい言葉を探せ、と。

それで、言いあぐねてしまった。



「みさおちゃん? 何か言おうとした?」



言葉に詰まった私は当たり障りの無い、柔らかい言葉を慌てて探した。

そして、ようやく出たのは、あまりにも稚拙なものだった。



「その、ユウくんは……私と居て、た、楽しいの?」

「……え、うん」



いい歳した大人が、小学生みたいな会話をして、小恥ずかしくて仕方無い。

案の定、ユウくんは戸惑っているのか、困った顔をしている。



「無理しなくても、良いんだよ」

「無理とかしてないし」



私は、息が詰まりそう──。

そう私の中だけで思って居たって、意味が無いことは分かってる。

さっさと言って、嫌われてしまえば良い。