「どんな風に、って……別に……」
彼の表情が、引いている。
多分、私、今、人生で初めて人に向かって、生意気言っている。
今にも、上擦りそうな声で。
でも、知りたい。
彼のことを何も知らないまま、終えるのは嫌だ。
そんな、いつの間にか雲隠れをされて、取り残される様なことは嫌だから。
どんな理由があろうと、何故か私を選んでくれた彼の印象を「嫌な人」それだけで終わらせたくなかった。
「ねぇ」
「ん?」
「ユウくんは、その……」
──さほど、私のこと「好き」じゃないよね。
強いて言えば、気になる、その程度で好意とは全くの別物なのだろうと、もう思わざるを得ない。
しかし、それを今、言い損ねた。
私の中の羊が本日、久方ぶりに登場し、邪魔をしたから。
散々、生意気なことを言っておいて、今更なのに。
相手を傷付けてしまうかも、と思った羊の私が、透かさず邪魔をした。
もっと当たり障りの無い、柔らかい言葉を探せ、と。
それで、言いあぐねてしまった。
「みさおちゃん? 何か言おうとした?」
言葉に詰まった私は当たり障りの無い、柔らかい言葉を慌てて探した。
そして、ようやく出たのは、あまりにも稚拙なものだった。
「その、ユウくんは……私と居て、た、楽しいの?」
「……え、うん」
いい歳した大人が、小学生みたいな会話をして、小恥ずかしくて仕方無い。
案の定、ユウくんは戸惑っているのか、困った顔をしている。
「無理しなくても、良いんだよ」
「無理とかしてないし」
私は、息が詰まりそう──。
そう私の中だけで思って居たって、意味が無いことは分かってる。
さっさと言って、嫌われてしまえば良い。



