羊かぶり☆ベイベー




私の意思が伝わったのか、そうでないのか、分かったことではない。

しかし、彼は私から目が話せなくなっている様子だった。



「みさおちゃん。この前、飯行ったときから、何か変だよ」



『いや、なんかさ……最近、みさおちゃん、急に変わった気がして。何かあった?』

社員旅行の前に、鍋料理のお店に行ったときの話だろう。

あの時なら、自分自身を変えたくて、努力している、前向きな理由があった。

だけど、生憎、今ではそうじゃなくなってしまった。

今の私は彼との「終わり」すら考えている。

だから、また、はぐらかさないでほしい。

私まで何を聞こうとしたのか、忘れてしまいそうだ。



「変、なのかな……? 私」

「いろいろ考え過ぎ。積極的になってくれるのは嬉しいけど、そうやっていろいろ突っ込んでくるのは、らしくないと言うか……」



彼の言い方に、つい反応してしまった。



「……本心を隠されて不安になる私も、本音を表に出そうとする私も、可笑しいこと、なの?」



彼は否定も、肯定すらもしてくれない。

それに、少し苛立つ。

こんなにも感情が自身の中で、表立って露になるのは、滅多なことだ。



「さっきユウくんは『最初のことなんて、気にしなくても良い』って、言ったよね」

「うん。言ったけど」

「私は最初から、不安だった。今も、ずっと」



ユウくんは、微かに首を傾げた。

きっと何を言っても、分かってくれないのだろう。

私も彼が示した、首を傾げるという行為の意味が、少しも理解出来ない。

こんなにも頭を回して、疲れてしまう相手は他に居ない。

理由なら分かる。

未だに、気心知れていないから。

私の大好きな人たち、汐里や会社の先輩、それどころか店長に吾妻さんだって、誰と居たって楽しくて、いつだって胸が高鳴る。

沈黙ですら、安らげる。

それなのに。



「本当は私、ユウくんの前では、どんな風に居たら良いのか、分からないの」