私の意思が伝わったのか、そうでないのか、分かったことではない。
しかし、彼は私から目が話せなくなっている様子だった。
「みさおちゃん。この前、飯行ったときから、何か変だよ」
『いや、なんかさ……最近、みさおちゃん、急に変わった気がして。何かあった?』
社員旅行の前に、鍋料理のお店に行ったときの話だろう。
あの時なら、自分自身を変えたくて、努力している、前向きな理由があった。
だけど、生憎、今ではそうじゃなくなってしまった。
今の私は彼との「終わり」すら考えている。
だから、また、はぐらかさないでほしい。
私まで何を聞こうとしたのか、忘れてしまいそうだ。
「変、なのかな……? 私」
「いろいろ考え過ぎ。積極的になってくれるのは嬉しいけど、そうやっていろいろ突っ込んでくるのは、らしくないと言うか……」
彼の言い方に、つい反応してしまった。
「……本心を隠されて不安になる私も、本音を表に出そうとする私も、可笑しいこと、なの?」
彼は否定も、肯定すらもしてくれない。
それに、少し苛立つ。
こんなにも感情が自身の中で、表立って露になるのは、滅多なことだ。
「さっきユウくんは『最初のことなんて、気にしなくても良い』って、言ったよね」
「うん。言ったけど」
「私は最初から、不安だった。今も、ずっと」
ユウくんは、微かに首を傾げた。
きっと何を言っても、分かってくれないのだろう。
私も彼が示した、首を傾げるという行為の意味が、少しも理解出来ない。
こんなにも頭を回して、疲れてしまう相手は他に居ない。
理由なら分かる。
未だに、気心知れていないから。
私の大好きな人たち、汐里や会社の先輩、それどころか店長に吾妻さんだって、誰と居たって楽しくて、いつだって胸が高鳴る。
沈黙ですら、安らげる。
それなのに。
「本当は私、ユウくんの前では、どんな風に居たら良いのか、分からないの」



