羊かぶり☆ベイベー




もっと早い段階で、確認していれば良かった。

そうすれば、もっと違う付き合い方が出来たのかもしれない、等といろんな思考を巡らせたところで、自身の答はとっくに決まっている訳だけど。

それでも、相変わらず気持ちを読み取れない表情に、私の胸の奥の方にある感情が、不安で僅かに波打つ。

既に半分以上、食べ進めていた彼は口に残ったものを飲み込むと、不思議そうに言った。



「何が」

「えっと……あの飲み会の日、私に声を掛けてくれたのは、何でだったのかな、って」



私が彼をじっと見ると、一瞬、目を逸らされた。

探っていると、察されたかもしれない。

そうだとしても、この際、構わない。

突然、何の脈絡も無く、可笑しなことを言い始めたのだから、そう思われたって仕様が無い。

私なら、そう割り切れるのに、なかなか言葉を返してこないユウくんは、やや動揺しているように見える。

質問を投げ掛ける前までの、無気力のような、威圧しているような態度から、落ち着きの無くなったユウくんをしばらく見ていた。


「──みさおちゃんが良いから、今は」

「私は、今の話をしてるんじゃなくて……」



ようやく出たと思った言葉は、激しく的を外していた。

そもそも「私が良い」なんて、本当にそんなことを思っているのかさえ、疑わしい。

より違和感を強めていく。

じっとユウくん見つめる私の変わらない態度に、彼は溜め息を吐いた。



「最初のことなんて、今更、気にしなくても良くない?」



そんな、あまりにも投げやりな、もしくは答から逃れようとしているような台詞。

納得がいかないのに、口下手で人の顔色ばかり窺ってきた私では、他人の話の引き出し方が、やっぱり未熟だ。