「それは……何度も通ってる場所で、慣れてるからかも。ここのお酒、本当に美味しくて。お店の雰囲気も好みだから」



どんな言葉が返ってくるのかも分からない、この状況は落ち着かない。

そして、彼の視線は相変わらず、私をしっかりと捉えている。

すると、ユウくんは言葉よりも先に、溜め息を吐く。



「そっか、そうだよね」

「な、何が?」

「みさおちゃんは慣れるのに、時間がかかるんだよね」



溜め息の後に続いた台詞に、違和感やら疑問やらが次々に浮かぶ。

まず、会話が噛み合っていないし、先程の溜め息の意味も分からない。

何より、引っ掛かっているのは──。



「『時間がかかる』?」

「俺に対しても、最初のことを思えば、少しずつ心を開いてくれてるもんね」



違う。

少しずつ心を開いているんじゃない。

自分自身の感情に負担をかけないないように、気兼ねなく居られる関係になれるように、私は心を開く「努力」をしているつもりだったんだ。

全く違うのに、まるで、私のことを知っているような言い方をする。

私の素の姿、ついさっき知ったばかりのくせに。

それに加えて、彼の言った「慣れるのに時間がかかる」という部分。

人が早々に慣れることが出来るようになるには、そんなことだけじゃないだろう。

時間だけが、解決出来るものではない。

自分の中で受け入れられる人と、そうではない人が徐々に現れてくるから。



「そう見えてる……?」

「うん」



彼の即答に、苦笑いするしかなかった。