陽もまだ沈み切らない普段の帰路を、自身の通勤車で行く。

そのハンドルを握る私の頬は、涙に濡れていた。

車は帰路を、問題なく進んでいた。

しかし、気分に問題大ありだ。

このぐちゃぐちゃの顔のままで実家には、とても帰れない。

父親、母親には、とてもじゃないが見せられない。

親に、こんなみっともない顔面を晒すくらいなら。

そんなことするくらいなら、いっそのこと──

ハンドルを、時計回りにきる。

いつもの道から逸れて、普段の私ならしようとも思わないことを、この際してしまおう。

今までも何回か、思い至ったことはある。

だけど、どうしても勇気が出なかった。

最後まで、やり通す勇気は無かった。

だけど、今なら、出来る気がする。

いつもより20分くらい余分に、車を走らせた。