私には、この状況の終着点が見えない。

身動きが取れない状況だ。

吾妻さんは一体、どうやってこの状況を切り抜けようとしているのか。

ユウくんに睨まれた吾妻さんは、営業スマイルから、とっさに苦笑いに切り換える。



「彼女を責めないであげてください」

「責めてるつもりはないですけど……心配なだけです。俺の彼女なんで」



こういうことを何気なく言ってしまえるユウくんには、いつも驚かされる。

あの女の子に話していたことも、今、強気な態度でそう言ってしまうところにも。

吾妻さんも驚いて、微かに目を見開いていた。

そりゃ、私が語っていた情報とは、少し違うから当然だ。

私も、彼のこういうところに出会すのは、稀なことだから。

すると、吾妻さんが流石の適応能力で、また表情を変えた。



「──やっぱり、そうなんですね」

「やっぱり……?」



ユウくんは怪訝そうにする。



「彼氏さんの話を、よく聞かせてもらっていたので。優しい彼なんだと。伊勢さんのお話通りですね」



嘘なのか、本当なのか、私自身も分からなくなってしまいそうな、吾妻さんの巧みな言い回しに混乱してくる。

その言葉に、ユウくんが動きを止めた。

そして、吾妻さんは言った。



「良かったら、一緒に行きませんか? 私たちの行きつけに」



私は、自分の耳を疑った。