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「ああ! 終わったぁ!」
すっかり人が減ったオフィスに、先輩の声が響いた。
時刻は、とっくに定時を過ぎている。
外は既に真っ暗だ。
すると、先輩が私の方へ椅子ごと体を向ける。
「伊勢さんは? どう? 終わりそう?」
「今、ちょうど終わりました。あと、確認するだけです」
「良かった! 本当にありがとうー」
先輩も気が抜けたのか、語尾が伸びている。
私も最後まで怠らず、じっくり見返し、抜けがないことを確認をした。
ラスト1枚の書類に目を通し、無事ミッションクリアだ。
「先輩! 終わりました」
「ごめんね。助かったわー。お礼に、またご飯でも何でも奢るからね」
「いえ。とんでもないです」
「他にやる事がなければ、早く帰りましょ」
そう言って、先輩は身の回りを片付け始める。
疲れきった私も、ゆっくり片付けを始めた。
鞄を開いたとき、スマホが目に入る。
そして、本日、何度目かも分からない忘れごとをまた思い出した。



