驚き、振り返る。
振り返れば、よく見知った顔で、先程も目が合っていた人だった。
「え、吾妻さん」
「どうも」
「……やっぱり、お1人ですか」
「もちろん、お一人様ですけど。何か?」
「いいえ。別に」
冗談とは言え、つい意地悪く言ってしまう。
それでも、吾妻さんの表情が楽しそうに笑ってくれているので、安心する。
その表情に癒されている自分を、今、自覚した。
私が出会った時から、冗談を言えた異性は、唯一この人だけかもしれない。
吾妻さんも笑顔のままで黙ってしまったが、まだ、もう少し一緒に居てほしい、と思ってしまった。
何か会話が欲しい。
「……もう、淋しくなっちゃったんですか」
からかうつもりで言ったのに、どうしてか声が小さくなる。
何故かしら、今、私は照れているらしい。
何を照れているんだ、私。
これでは、意地悪にならないじゃないか。
堪えられなくなって、オルゴールの上の丸々太った三毛猫をじっと見つめる。
すると、少し間を置いてから、吾妻さんが言う。
「うん。淋しくて、みさおさんの後ろ姿見たら、話し掛けたくなって」
この人は、またこんな思わせ振るようなことを言ってのける。
じんわりと、顔が熱を帯びてきた。
「そっ、そうですか……」
それを言うのすら一苦労で、全く可笑しな話だ。
自分から、もう少し話したいと思ったくせに。
まるで、打ちのめされた気分だ。
それ以上は何を言っても、声が震えそうで怖い。
そう思うと、今度は黙ってしまう。
私って、極端だな。
でも、まだもう少し、何か──。
「みさおさん、買うの? オルゴール」



