羊かぶり☆ベイベー




吾妻さんの白色をしたセダンは、偶然にも私の愛車の隣に駐車されていた。

だけど、そんなことを彼にいちいち教える必要は無い。

少し開きそうになった口を閉じる。

私は促されるがまま、彼の車の助手席に乗り込んだ。

エンジンをかける吾妻さんに、今更なことを尋ねる。



「あれ…………?お酒、一口も飲んでないんですか?」



あれ程、やみつきになるほど美味しいお酒があるお店で、飲まずに何をしていたというのだろう。

なかなか答えようとしない彼を、しばらく見つめて、言葉を待つ。

しかし、一向に口を開く気配がない。

もしかして、かなり疚しい気持ちがあるからだろうか。



「まさか……飲酒……運転?」

「違うから!ああ、もう……俺、実は一滴も酒、飲めないんです!」

「あんなに美味しいのに……人生、損してる」

「大きなお世話だよ。人間にはさ、得意不得意ってもんがあるでしょうが」



少し膨れて、不機嫌に発進した。