吾妻さんの白色をしたセダンは、偶然にも私の愛車の隣に駐車されていた。
だけど、そんなことを彼にいちいち教える必要は無い。
少し開きそうになった口を閉じる。
私は促されるがまま、彼の車の助手席に乗り込んだ。
エンジンをかける吾妻さんに、今更なことを尋ねる。
「あれ…………?お酒、一口も飲んでないんですか?」
あれ程、やみつきになるほど美味しいお酒があるお店で、飲まずに何をしていたというのだろう。
なかなか答えようとしない彼を、しばらく見つめて、言葉を待つ。
しかし、一向に口を開く気配がない。
もしかして、かなり疚しい気持ちがあるからだろうか。
「まさか……飲酒……運転?」
「違うから!ああ、もう……俺、実は一滴も酒、飲めないんです!」
「あんなに美味しいのに……人生、損してる」
「大きなお世話だよ。人間にはさ、得意不得意ってもんがあるでしょうが」
少し膨れて、不機嫌に発進した。



