とにかく今日は、旅行なのだから、こんな時くらい心を弾ませて過ごしたい。

一旦、忘れよう。

旅行は、非日常も同然なのだし。

今日は、自分の為に過ごそう。

そう思ってからは、素直に楽しむことに専念した。

渓谷鉄道のトロッコ電車の車内では、先輩の身の上話を聞いたり、何段もある階段を息を切らして、運動不足を覚りながら登ったり。

苦労して辿り着いた所には、壮大な湖、ダムが広がっていた。

あまりの感動に呆気にとられる。

思わず、言葉が漏れた。



「……凄いですね」



すると、先輩も目線は景色へ向いたまま、相槌を打ってくれる。

そして、2人して写真を撮っていると、突如、観光放水が始まった。

先輩と興奮を隠せず、ついはしゃぐ。

時々当たる、霧状のダムの水が気持ち良かった。

終わってもなお、興奮を抑えきれないまま、階段を上り下りした。

また、その先で辿り着いた資料館では、昭和当時の作業風景の写真などを歩き読む。