そして、知らぬ間に4時間も経ち、バスは定刻通り、1つ目の目的地に着いたというわけだ。

久しぶりの地面に降り立つ。

時期は、初夏。

地上では、日差しが徐々に照り付け始め、暑さの予兆にうんざりしていた頃。

しかし、流石は某ダム渓谷。

普段の生活で感じている気温より、明らかに低い。

気温と空気の心地好さに、私が小さく声を漏らしながら、伸びをすると、先輩はクスクス笑う。



「長旅、疲れたね」

「そうですね。先輩は大丈夫ですか?」

「私はさっきも話した、よさこいで鍛えてるから。やっぱり一緒に、伊勢さんもやる? よさこい」

「んん、考えておきます」



冗談めいた態度で胸を張り言う先輩に、苦笑いで返す。

そんな会話をしていると、順に降車する社員さんの中にユウくんの姿が見えた。

私の目の前を、営業部の女の子と肩を並べて通り過ぎて行く。

ただ、それだけで、何かやり取りがある訳でもない。

それどころか、意図的に関わらないようにされている気さえする。

そう思ったのは、今朝、会社に集合をして、バスに乗り込む直前のことがあったから。

バスに乗る前、営業部で何やら楽しげに話していた。

彼らが乗り込む順番になり、私が呼び掛けに行くと、皆さんから返事はもらえたものの、ユウくんと例の営業部の彼女には目を逸らされた。

女の子の方に、そうされるのは納得がいく。

しかし、ユウくんにされた、それは少し解せない。

別に最近、最後に会って、喧嘩をしたという訳でもない筈。

だから、これは恐らくだけど。

女の子に対して、何か気をつかうような、気まずいことがあるからなのでは、と思ってしまう。