「いや、それは……」



せっかくの憩いの時間なら、ユウくんからは逃げたい、かも。

緊張し過ぎて、心から楽しめないのは、もう目に見えている。

頑張るのなら、平日に。



「きっと、彼は営業部の人たちと、纏まって行動すると思います。もしくは、社長たちのお側でお話しするとか」

「そっか……」

「はい」

「じゃあさ。もし、何もすることが無くなって困ったら、俺のところにおいで」

「へ」

「俺も2日間ぼっちは、しんどいかも」

「あ、ああ、はい。気が向いたら」



ヘラッと、平気な顔で言ってくる。

これは、もしかして甘えられているんだろうか。

まったく、どんなつもりで居るんだろう。

そんな言われ方をすると、また勘違いしてしまいそうになる。

これも仕事柄だからと言って、明るく親しまれやすいように、みんなへこういうことを言ってしまうんだろうか。

それは、それで複雑な気分だ。

もし、吾妻さんに彼女さんが居たとしたら。

きっと不安で堪らないだろう。

私が気にすることでもないし、気にすること自体が可笑しい。

だって、私は吾妻さんにとっては、ただのクライアント。

そして、ある夜、何の巡り合わせか知らないが、あの店長の小さなお店で偶然、出会っただけの人。

それ以上は、突っ込んじゃいけないことを分かっているのに。

何より、私には「彼氏」という存在が居るのだから。

だけど、この人の笑った顔は、私の胸の辺りを締め付けてくる感覚がする。

理由なら、何となく分かる。

こんなこと、駄目なのに。



「みさおさん?」

「……は、はい?」



私は、また平気なフリを装う。

羊かぶりな私は忘れた頃に現れて、いつまででも私に付き纏う。