私は「へぇ」とだけ、相槌を打っておく。



「みさおさんは? 行く?」

「はい。行きますよ。毎年、ほぼ強制参加なので」

「強制なんだ……」

「はい」



役職の人達には女性社員が接待をするという流れが、出来上がっており、お局様自ら仕切るが為に、それを回避する方法は一切無い。

男尊女卑が罷り通る時代でもないのに、社内ではそんな風習が残っている。

だから、会社の括りの中での旅行とは言えど、同期で仲良しの汐里と観光出来ることだけが、唯一の楽しみだったのに。

今年は、それも無い。

今年の旅行は、ひたすら頑張るしかないようだ。

そう思うと、気が重くなる。



「せっかくの憩いの時間な筈なのに、勿体無いね」

「本当ですよね」



思わず、乾いた笑いが漏れた。

まぁ、1人も良いけれど、お局様や先輩方について回ろうかな、とも思う。

有難いことに、環境には恵まれて、特に関係が悪い訳でもないので、更に懇親を深める為に。

そこまで、苦ではない。



「吾妻さんは、お一人で行動されるんです?」

「まぁ、そうなるかな。人間観察するのが、仕事だから。あとは、いろんな所に媚売っとこうかな」

「やらしい……」

「ははっ。まぁ、仕事だから、ね。みさおさんは? 彼氏さんと約束でもしてみたら、どう?」