「な、何がって言われると、アレなんだけど……」

「うん」

「も、もっと……しっ、しっかりしないと、って思って」

「何で、そんなまた……既に真面目で、結構しっかりしてると思うけど」

「そんなことは無いし、そ、そうじゃなくって……」



階段の踊り場で一緒に居た営業の後輩ちゃんとは、あれ以降、本当に何も無い?

あの時、私が覗き見してしまった日に、あなたが後輩ちゃんに言っていたことは、全て本心?

覗き見て、盗み聞きまでした私が言うのも何だけど、何も心配するような関係ではないと、本当に信じても良いの?

もしかしたら、私、あなたのことをちゃん好きなれるかもしれない。

こんなこと聞いたり、言ったりしたら、そりゃ面倒臭がられるんだろう。

でも、ここで勇気を出して、素直に自分の内にある気持ちを晒け出していかなければ、何も変われない。



「えっと……あの、ね……?」



素直に打ち明けていかないと、何も変われない。

そう思っているはずなのに。

どうしても良い顔をしていたい、羊かぶりな私は相変わらず狡い奴だ。

誰彼構わず、嫌われたくなくて、怖くて、それ以上が言えない。

開きかけた口が少しずつ閉じて、ついには固く結んでしまった。

きっとしばらくは、まともに開かない。